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京の宿日記

【京都】町家・町屋のリノベーションをするには

2021年03月18日

五条邸入り口

京都の歴史について語ると広く深くでまともには語る事ができません。

なのでまずはタイトルにある町家・町屋についてお話しさせていただきます。

このコラムでは町家・町屋について何度かご説明させていただきました。

まずなぜ町家・町屋という風に今回記載させて頂いているかご説明致します。

京都の町家の多くは町屋ではなく町家表記の方が多いのです。(nao炬乃座(なおこのざ)でも町家と呼んでおります。)

しかし一足京都の外へ出ると急に町家ではなく町屋という表記が増えてくるのです。

結論を言いますと町家と町屋、両者に明確な違いはございません。

それはどちらも家とお店が一体となっている建物だからです。

『卵が先か鶏が先か』みたいなお話しになってきますが、町の家にお店が一体化している呼び名が町家で町の屋(お店)に家が一体化している呼び名が町屋となります。

京都では前者の意味合いが多かった為、京都の町家という風になったのだと思います。(諸説あり)

つまり町家呼びと町屋呼びの両方の意見を尊重し今回は『町家・町屋』で統一させて頂きたいと思います。

今回はそんな町家・町屋についてと最近関心のある町家・町屋のリノベーションについてお話しさせて頂きます。

 
 

町家・町屋とはどんな建物なのか

先ほどお話した通り町家・町屋とはお店とお家が一体化した建物となっております。

今回は全国で微妙に意味合いが変わってきますので、全国の町屋ではなく京都の町家の方を中心にご説明させていただきます。

まず多くの場合、町家・町屋の一階にはお店を構えており、その奥(もしくは2階)部分が住居スペースとなります。

そして町家・町屋は密集している事が多く、その為、鰻の寝床と呼ばれるように光が入り辛い造りとなっているのです。

また京都の町家・町屋では間口の広さによって税金の徴収に変動があったので更に入り口も狭くなり鰻の寝床のような造りが多くなったと言われています。

とすれば居住スペースは真っ暗になり湿気も溜まってしまいますよね?

そうならないように町家・町屋には坪庭と言われる小さなお庭が必ずと言っていい程、付いています。

坪庭がある事でお日様の光を家の中心に取り入れる事ができます。

更に玄関からその坪庭にかけて風の通り道が作られており窓を開ける事で調湿効果や扇風機のように涼しい風が家の中を通る造りになっているのです。

昔の家でも知恵と工夫により京都の高温多湿な環境に上手く適応出来ていたんですね。

ちなみに現在でもこの造りは役に立つのでnao炬乃座(なおこのざ)に訪れた際には全ての窓を開けてみてください。

nao炬乃座(なおこのざ)で天然の扇風機を味わう事ができますよ。

さすがに京都の本格的な夏と冬には耐えきれませんのでそこはクーラーや炬燵をご活用ください(笑)

 
 

町家・町屋の坪庭は必要なのか

さてたまに聞かれる事がある「町家・町屋の坪庭は必要なのか」という問題ですが、これは町家・町屋には必要です。

町家認定にも坪庭が必要ですし、そもそも当時の状況により生まれた文化として町家の坪庭はかなり重要な要素となります。

先ほどお話した通り坪庭がなければお部屋は薄暗くなり日光も入りづらくなるので湿気とカビの温床にもなります。

景観的にも歴史的にも合理的にも町家の坪庭は必須です。

もし通しても坪庭は要らないというのであれば町家そのものの造りを変えたり建物の構造にも手を加えていく必要があるのでそれは町家・町屋出なくなる恐れも十分に考えられます。

この後お話しするリノベーションでも触れますが、手を加え過ぎる事で元の状態とは全く別物になったりするのでご注意ください。

 
 

リノベーションはどんな感じになるのか

五条邸入り口

最近では町家・町屋をリノベーションしてお店を構えたり家として住まわれる方も増えてきました。

それは京都の歴史と共に今まで生き抜いて来た実績と日本人のDNAに刻まれた町家・町屋への懐かしさが人気の秘密だと思います。

しかしたまに聞かれる事が「町家・町屋をリノベーションしたらそれは町家・町屋と言えるの?」という事です。

答えはYESです。どんどんリノベーションして全て変えてしまえばいずれ町家・町屋とは言えなくなってしまうでしょう。

しかし要所を押さえておけば問題ありません。

実際にリノベーションとは手を加えてよくすることや修復と再生を意味します。

nao炬乃座(なおこのざ)でもリノベーションにより町家・町屋を残しながら快適にご宿泊頂けるように工夫しております。

例えば畳や床などはどうしても消耗品となってしまいますのである一定の期間を過ぎると交換しないといけません。

それと同じく壁や瓦なども新しくしなければ危ない箇所はどんどんリノベーションしていきます。

しかし流石に柱や屋根を丸ごと変えるとどうなるでしょう?

坪庭を潰して普通の庭にしたり土壁を全て現代の内壁に変えてしまってはもはや修復と再生ではなく「造り替え」です。

この辺りを理解できていれば問題なく京都の歴史と文化を残しながら快適かつ安全にお過ごし頂くことが可能です。

町家・町屋の実際のメリットや雰囲気、空気感を残しながら最新の家電を導入することも何ら問題ありません。

そういった新しい形の町家・町屋も今後は増えていくのだと思います。

ちなみに町家・町屋のリノベーションには京都市の助成金申請も行える場合もありますので興味があれば京都市のHPを調べてみるのもおすすめです。

町家・町屋の耐震補強やその他工事にも使えるそうですよ。

もしリノベーションするほど時間も気力もないという方であればもう既にリノベーション済の町家・町屋もあるそうです。

この辺りもじっくりと探して見る事でご自身の価値観とピッタリあった町家が見つかる事もございますので是非ご検討ください。

1からご自身で考えるか既にある物の中でベストを探されるのか、どちらにせよあなた様にとって最高の町家・町屋との出会いがございます事を心よりお祈り申し上げます。

 
 

まとめ

鍾馗(しょうき)さん

今回は町家・町屋とリノベーションについてお話しさせていただきました。

nao炬乃座(なおこのざ)では開業当初如何に町家・町屋の雰囲気とお客様の快適性のバランスを取るか非常に悩みました。

何せ町家・町屋自体は古い物ですのでそのままご宿泊されると間違いなくご満足いただけませんからね(笑)

どこを変えると印象や雰囲気が損なわれるのか?

どこまで快適な物を導入していいのか?

そしてnao炬乃座(なおこのざ)というお宿をどこまで主張する事ができるのか?

この辺りは今でも試行錯誤しておりますが、初めの一歩ではより一層、気を使い慎重に検討しておりました。

もし実際にこの記事がきっかけでリノベーションをして頂ける際には「本当に町家・町屋である必要があるのか?」「町家・町屋と快適性のバランスは取れているのか?」この2点をじっくりご検討ください。

恐らくだいぶ悩まれるでしょうし時間も気も非常に使う事になります。

町家・町屋の鰻の寝床というのは良い意味でも悪い意味でも使われるので出来ればそれを良しとする方に町家・町屋のリノベーションはおすすめといえるでしょう。

もちろんそうでなくても住めば都という言葉もございますのでそういった意味でもnao炬乃座(なおこのざ)でも京都の町家・町屋体験をして頂ければ幸いでございます。

人気の高い町家・町屋ですので今後も取り壊されることなく京都の景観であり続けて欲しいと願うばかりです。