2021年04月09日
京都タワー、京野菜、京都八つ橋など京都を代表するものはたくさんあってどれも大変人気がありますよね。
その中でも「京町家」は最近では認知度も高まり京町家カフェや京町家レストラン、京町家の本屋さんや京町家の雑貨屋さんなど京町家をコンセプトにしたお店がたくさん増えてきました。
京町家nao炬乃座(なおこのざ)もそういった京町家をコンセプトにした京都のサービスの1つで、京町家の懐かしい雰囲気によりおばあちゃんの家に帰ってきたような安心感を得ることができます。
日本人の魂に刻まれた和のお家である京町家が人気が出るのも当然といえば当然なのかもしれませんね。
特に京都は歴史も長く京町家自体の歴史も100年以上ある京町家も多いので当時の時代や生活スタイルにもピッタリとハマっており、日本各地の懐かしいと思われる世代とよく似ているのでしょう。
さてその様な理由から京都で人気のある京町家ですが、京都以外にも町家が存在するのをご存知でしょうか?
もちろん呼び名は京町家とは違い、、一般的には町屋(町家)と呼ばれています。
この京町家と京町屋は「家」と「屋」の違いはありますが、本来意味は違いはありません。
(ややこしい言い回しで混乱させてしまい大変失礼いたしました。)
今回はそんな京都の京町家と京都以外の町屋の言葉の違いについてお話をさせて頂きます。
この違いが分かれば京町家と町屋の違いだけではなくそれぞれ町家の意味も明確にご理解頂けると思います。
呼び名や意味の境目が曖昧だからこそしっかりと違いをご説明させて頂き皆様にご理解頂けますよう善処致します。
その違いを説明する前にまずは京町家と町屋についてからご説明いたします。
至らない点は多くあると思いますが何卒、よろしくお願いいたします。
京町家とは京都に存在する町家の事を指しております。
京町家には様々な形式がありますが広く知られている一般的な京町家とは家とお店が一体化した建物の事です。
基本的に一階がお店で二階は家である事がメジャーですが、これも形式によって異なり、一階が住居であったり平屋形式で手前がお店、奥が住居スペースというような町家も存在しております。
当時の営業していたお店の種類は様々ですが、イメージしやすいのは時代劇の城下町などが分かりやすいのではないでしょうか?
ただそのイメージとの違いはそこまで広くはなく玄関が細長く奥に続いていく造りになっています。
これを京都では「鰻の寝床」と称しており、京町家の造りに共通している造りでここが大きく異なる京町家は多くはないでしょう。
間取り等はもちろん違いますが、細長い玄関や坪庭等々、京町家には共通した造りが多くあります。
これは当時の背景や環境に適応する為に、京町家が共通して似たような造りにしているからだそうです。
まず玄関についてですが、当時は玄関の広さで税の徴収額を決定していたという背景があったそうです。(諸説あり)
すると必然的に節税対策として玄関は狭くなり、お店、または居間のスペース確保のため、奥側の部屋を大きくしてよく京都で知られる「鰻の寝床」が完成するわけなんですね。
もし京町家にご宿泊された際に「なんでこんな造りになっているのか?」という話題が出てきたらぜひお連れ様にも教えてあげてください。
さて上記の理由により鰻の寝床が完成すると、次は部屋が全体的に薄暗くなってしまいます。
京町家は基本的に両側の京町家とピッタリ隣り合う形で建設されている事が多いので、両側には窓をつける事が出来ません。
なので昔の職人さん達が坪庭というものを考えて作りました。
坪庭を作る事で得られるメリットは、坪庭部分には天井が無い為、お日様の光を奥の座敷に取り入れる事ができます。
更に坪庭から玄関まで一直線に道ができ外気が通りやすくなるので、風の通り道も確保して通気性も得られるようになりました。
細長い玄関から真っ直ぐに坪庭まで風の通り道となっていますので、夏でも涼しい天然の扇風機が完成したというわけです。
京都は盆地の為、夏は高温多湿となります。
ジメジメとした暑い夏の京都にもこの天然の扇風機によって快適に順応できるというわけです。
このように当時の背景や環境に応じて今の京町家は形作られているわけです。
もちろん全ての京町家が同じ場所に建っているわけではありません。
それぞれ違い場所に建てられており、川沿いや山間、城下町やその他の地域でも微妙な違いがあります。
その微妙な差や小さな違いにより建て方や工夫した造りにも違いが出てくるのでそういう違いを見つけるのも京町家の楽しみ方かもしれません。
場合によっては天然の扇風機が要らなかったりむしろ邪魔になる事も考えられるのです。
今回ご紹介した内容と違う造りの町家を見つけた際にはぜひ推理ゲームのように考察してみてください。
あなた様はシーサーをご存知でしょうか?
沖縄では守り神として大変有名なシーサーですが、京町家にも実は鐘馗さんという守り神が屋根の上にいらっしゃるのをご存知でしょうか?
写真では入り口の屋根の上にちょこんと立っていらっしゃるのがご覧頂けると思います。
基本的に鐘馗さんは屋根の上におり怪しい人物や悪い気を立ち寄らせないように見張ってくださっています。
沖縄のように派手な色や大きさはないものの密か佇み京都の安全を見張ってくれているその慎ましさが愛らしさと頼もしさを感じると評判なのです。
鐘馗さんがしっかりと見守ってくださっていますから、もし京都にお越しの際は京町家の屋根の上に注目してみてください。
全く気にしていない時には気づきにくいものですが、今回鐘馗さんをご紹介した事で今度京都に来た時には本当にたくさんの鐘馗さんが京都を見守ってくれているのだと実感できるかと思いますよ。
町屋についてもご説明させていただきますが、冒頭でもお話しさせて頂きました通り町屋も京町家も意味自体は同じで家とお店が一体化しているという意味でも全く同じものとなります。
※ちなみに町家と町屋も漢字が違うだけで同じ意味です。
お家を意味する「町家」とお店を意味する「町屋」という事で見て頂ければ違いはないという事がお分かり頂けるでしょう。
町屋は日本でよく見られた造りで商いと生活を両方こなすために作られたものだったわけです。
つまりその生活スタイルが流行っていたという事になります。
今でも一階がお店屋さんで二階や奥が民家というのはありますよね?
それが古民家の状態が「町屋」となります。
町屋は生活とビジネスを両立させた当時の姿だったわけです。
こうなると疑問に思う事がありますよね?
「京町家と町屋の明確な違いはどこにあるのか?」ということです。
京町家と町屋の違いは「京」があるかないかです。
ここまで引っ張っておいて恐縮ですが、実は明確な違いはこれだけです。
一応説明だけしておくと京町家という言葉自体は昭和40年代の民家ブームの際に作られた造語です。
造語ではあるのですがそれを指す建物の定義が「1950年(昭和25年)以前に京都市内に建てられた町屋を含む木造家屋」なので言葉が後から作られたものの建物自体は昔から存在しているので京町家だけの特別な造り!!という明確な何かがあるわけではないのです。
格子(こうし)や箱階段(はこかいだん)等もどちらかと言えば日本の工法等に属しているので京町家の特徴か日本家屋の特徴かピッタリと線引きするのは難しいでしょう。
ただハッキリと言えるのは京都の町家だからこその京町家!という事になるわけですね。
ちなみに京町家というように今回は書かせて頂いてはおりますが、同じ町屋なので「京町屋」と呼んだり書いたりしても間違いはありません。
そして「1950年(昭和25年)以前に京都市内に建てられた町屋を含む木造家屋」である以上は築70年以上の木造家屋は全て京町家と定義する必要があるのです。
平屋でも看板の着いた建物でも通常の家屋であっても京町家です。
実は非常に京町家の定義される幅は広いわけなんですね。
しかしそうなるとただ築70年以上の京都市の家屋=京町家では納得できない方もいらっしゃると思います。
なので最後に京都市の行う京町家認定の条件についてもご紹介させていただきます。
京町家認定とは京都市が定める条件をクリアする事で正式に京町家であるとお墨付きをもらえる認定となります。
認定京町家事業の要件については,以下のとおりです。
1.住宅宿泊事業が営まれる京町家が,次に掲げる形態及び意匠を有するものであること。
瓦ぶきの屋根
隣地に接する外壁又は高塀
次のいずれかに掲げる形態
通り庭(道に面した出入口から続く細長い形状の土間をいう。)
火袋(細長い形状の吹き抜け部分をいう。)
坪庭又は奥庭
次のいずれかに掲げる意匠
通り庇(道に沿って設けられた軒をいう。)
格子(伝統的な様式のものに限る。)
2.使用する京町家の特徴や由来,そこで受け継がれてきた生活文化について,対面で説明をするための方法及び当該説明の内容に関する具体的な計画を定めていること。
3.2の計画を実施することができる体制を整備していること。
以上となります。
これらの条件を無事に満たすことができ、築70年以上の京都市にある日本家屋であれば立派な京町家である事に間違いありません。
修繕やリフォーム等で形が変わっているとなかなか難しい条件ですが、一応nao炬乃座(なおこのざ)の町家は京町家認定を無事合格致しております。
今回ご紹介した「京町家とは何ぞや?」という事や「京町家認定」を知っているだけでも結構物知りな部類に入るのではないでしょうか?
今後もし京都にお越し頂く際には京町家のお宿やお店を隅々までチェックしてみてくださいね。
もちろん京町家nao炬乃座(なおこのざ)も毎日営業致しておりますので今回ご覧頂いたあなた様のお越しを心よりお待ちいたしております。
ここまでご拝読頂き誠にありがとうございました。